2020年1月23日 10:00脱プラスチック問題に取り組む日本企業の事例
近年、廃棄プラスチック問題(廃プラ問題)が深刻化しています。
海に流れ出したプラスチック、いわゆる海洋プラスチックごみは世界規模で見ると年間800万トンにものぼります。
このままのペースで増え続けると、2050年には海洋プラスチックごみの量が海にいる魚の数よりも多くなると予想されています。
脱プラスチック問題は世界規模で見ても早急に取り組むべき課題です。
しかも、海洋プラスチックごみの8割以上はアジア諸国から出ているともいわれています。
このような深刻な状況下において、日本企業は脱プラスチックに関してどのような取り組みを行っているのでしょうか。
今回はその事例を見ていきましょう。
日本における脱プラスチック問題の現在
日本ではごみの分別が厳しく行われているため、国民全体のリサイクルへの意識は高いといえます。
しかし、顧客ニーズに合わせた過剰包装の傾向があることなどから、プラスチックの利用量は世界的に見ても多いのが現状です。
また、回収された廃棄プラスチックの多くが海外輸出されているという現実もあります。
廃棄プラスチックの多くは中国に輸出されていましたが、2017年には環境汚染問題を理由に中国が輸入規制を始めました。
そのため、現在は日本国内で発生したプラスチックごみをどこで処理するのか、場所が見つからないという新たな問題も起こっている状況です。
このような流れを受け、世界的に脱プラの動きが高まっていることから、日本企業でも少しずつ取り組みが始まっています。
脱プラスチックに取り組む日本企業の事例
では、具体的にはどのような取り組みが実施されているのでしょうか。
ここでは脱プラスチックに実際に取り組んでいる日本企業の事例をご紹介します。
食品メーカーでの脱プラ事例
多くの大ヒット商品を生んでいる某食品メーカーでは、海洋プラスチック問題などが取り沙汰される以前から、環境問題に積極的に取り組んでいます。
まず、2008年には主力商品であるカップ麺の容器を、発泡スチロール製のものから紙由来のものへと変更しました。
さらに、2019年末からは容器に使用している石油由来プラスチックを植物由来のバイオマスプラスチックに順次変更することを発表しています。
これにより、この製品容器のバイオマス率は81%となりました。
従来のカップよりもさらにプラスチック量と焼却時のCO2排出量を抑えることができます。
ほかにも、同じカップ麺のバリエーションとしてリフィルタイプの製品の開発・販売をすることでも、脱プラスチックに取り組んでいます。
リフィルタイプは従来製品の4分の1程度のサイズにまで麺を圧縮させることにより、麺を入れる容器が小さくなり、必然的にプラスチックごみの量も削減することに成功しています。
外食チェーンでの脱プラ事例
多くのファミリーレストランを展開する某大手外食チェーンでは、2018年からプラスチック製ストローの廃止を順次開始し、2019年7月に全店舗での廃止が完了しました。
基本的には店舗内にはストローは設置せず、利用客からの要望があった場合にトウモロコシを原料としたストローを提供しているとのことです。
ドリンクバーを有するファミリーレストランなどのドリンクが注文されやすい業態でプラスチックストローを廃止することで、大幅な廃プラ削減につながる見込みです。
ファストフードチェーンでの脱プラ事例
大手ファストフードチェーンでは、子ども向けに提供しているセットメニューに含まれる「おもちゃ」に関する施策などを通して、脱プラスチックに取り組んでいます。
旧来は、子ども用セットのおもちゃの選択肢はプラスチック製のおもちゃのみでしたが、紙製である絵本や図鑑のラインナップが追加されました。
さらに、プラスチック製のおもちゃが多種類のプラスチックから製造されていてリサイクルができない問題を解決するべく、使い終わったプラスチック製おもちゃを店頭で回収し、トレーへと再生する試みも実施されています。
また、2025年までには店舗内で使用しているプラスチックストローが、紙製ストローに変更される予定です。
IT企業での脱プラ事例
某IT企業では、従業員向けに食事やドリンクを提供している社内カフェで、脱プラスチックの取り組みを始めています。
海洋汚染の一因であるプラスチックごみ削減を目的に、2019年11月より社内カフェのストロー利用を原則廃止しました。
また、ストロー以外のプラスチック容器も紙製に順次切り替えていき、将来的にはテイクアウト用の容器も紙製のものに変更される予定です。
保険会社での脱プラ事例
大手火災保険会社でも、首都圏エリアの事業所において、社員食堂で使用してきたプラスチック製ストローとカップが紙製のものに変更されました。
カップのフタにはプラスチックが使われていますが、順次紙製に変更していく予定とのことです。
また、関西の事業所でも今後、同様の切り替えが予定されています。
おわりに
今回は、脱プラスチック問題に積極的に取り組んでいる日本企業の事例を5つご紹介しました。
日本国内の多くの企業が、食品容器の原料を変更したり、提供するサービス内容を変更したりといったやり方で、脱プラスチックに取り組んでいることが分かりました。
多くの消費者が生活の中で無意識に使用しているプラスチック製品を廃止したり、紙製のものに変更したりすることは脱プラスチックへの大きな一歩です。
消費者に形ある製品を販売する業種ではなくても、社内食堂で使用する容器などを変更することでプラスチックの廃棄量を減らすことができます。
世界的に見ても多くのプラスチック製品を生産している日本だからこそ、脱プラスチック問題に積極的に取り組むことが大きな意味を持ちます。
天満紙器ではお客様の脱プラスチックへの取り組みをお手伝いするべく、今後も再生可能資源である「紙」を原料とした食品容器の商品開発に努めてまいります。